Antique Scuba Gear
レギュレータの構造
スクーバダイビングで重要な機材にレギュレータがあります。
どんな仕組みで動作するのでしょうか古い機材をメンテする為に必要なレギュレータの構造について記載します。
1.レギュレータの原理(高圧ガス制御) 1943年にクストーとガニアンによって水圧に応じて自動的に弁を開き空気を供給するダイアフラム式のレギュレータが発明されます。タンク内の高圧空気を水深にあわせで呼吸できる圧力まで減圧する必要があり高圧ガス制御を行うこと必要でした。クストー&ガニアンによって発明されたレギュレータの原理は今も変わりません部品の強度や改良により多くのレギュレータが生まれました。 ※ スキューバダイビング用のレギュレータを対象とする為、高圧ガスは空気を前提とします。 |
|||
(1) 高圧制御方式とレギュレータ 最初のレギュレターはタンク内の高圧を一気に呼吸圧まで落とす1段減圧方式を採用していました。Mistralなどが1段減圧方式レギュレータです。1段減圧方式は高圧ガスの減圧機構を開発する初期の 段階で生まれた方式です、制御に必要な部品点数も少なく非常にシンプルな構造です。やがて高圧ガスの減圧機構の研究が進むとよりスムースに空気を供給する為に2段減圧方式を採用することになります、Aqua-Masterなどが2段減圧方式のレギュレターです。1段減圧レギュレータではタンクバルブに接続されるレギュレターで呼吸圧を作り出し、呼吸ホースによってダイバーの口元まで運ぶダブルホースレギュレターが主流となります。高圧制御機構はレギュレータ部分のみであり呼吸ホースは圧力ホースでなくても良いことになります。2段減圧レギュレータでは中圧を作り出し、中圧ホースによる1stステージと2ndステージを結ぶシングルホースレギュレターが主流となります。”シングルホース”と言う呼び名もダブルホースがあっての呼び名と思われます。 1段減圧方式レギュレータ(mistral) ・ ダブルホースレギュレータ タンク → レギュレータ → ホース → マウスピース 高圧 高圧→呼吸圧 呼吸圧 呼吸圧 2段減圧方式レギュレータ(aqua-master) ・ ダブルホースレギュレータ タンク → レギュレータ → ホース → マウスピース 高圧 高圧→中圧→呼吸圧 呼吸圧 呼吸圧 ・ シングルホースレギュレータ(caripso) タンク → レギュレータ(1st)→ホース → レギュレータ(2nd) → マウスピース 高圧 高圧→中圧 中圧 中圧→呼吸圧 呼吸圧 |
|||
(2) 高圧空気の制御方式 レギュレータで空気を出したり止めたりするためのバルブ(弁)には基本的に2つの方式があります。 a.アップストリームバルブ(上向き弁) 空気止める弁は空気圧で押さえ込む為、空気圧が高くなればより強くしまります。空気を出す時は弁を下から押し上げて弁に隙間を作り空気を通します。アップストリームバルブは部品の最高圧に対する強度が必要となります。強度不足や劣化がある場合(特に高圧)の場合は爆発の危険性があります。1stステージのヨーク部分での減圧はほとんどアップストリームバルブが採用しています。 b.ダウンストリームバルブ(下向き弁) スプリングの力で弁を抑えて空気の流れを止めます。空気を出す時は弁を引き弁に隙間を作り通気をとおします。ダウンストリームバルブは高圧がかかった場合スプリングが圧力にまけて押し開けら 空気が漏れます、いわばセイフティーバルブとなります。2ndステージの呼吸圧部分での減圧はほとんどダウンストリームバルブが採用されています。 レギュレータではタンク内の高圧(150Kg/cm2〜200kg/cm2)より中圧を作る1stステージは高圧での強度を確保した部品を使いアップストリームバルブ使用します。また中圧より呼吸に応じた圧力を作り出す2ndステージは部品の軽量化が可能なダウンストリームバルブを使用します。1stステージで中圧が作り出せず高圧が2ndステージ流れた場合、2ndステージがダウンストリーム方式の為、エアーフローをおこし爆発や機器破損を回避してくれるセーブティーバルブの働きをします。 |
|||
(3) レギュレータの構造と分類 レギュレータには2つの重要な役割があります。第1は中圧(環境圧+7〜10)Kg/cm2を作り出すこと、特にシングルホースレギュレータにおいてはBCへ供給する中圧やオクトパスへの中圧を作り出す必要があります。第2にダイバーの呼吸要求に合わせて空気を供給することが必要になります。機器を通過してくる空気を呼吸する為、呼吸抵抗が発生します。呼吸抵抗をいかに軽くするかが必要になります。 レギュレータ1stステージの構造は分類すると4つの方式に分類されます。 +-- アンバランスピストン(スタンダードピストン) ピストン式------+ +-- バランスピストン +-- アンバランダイアフラム ダイアフラム式--+ +-- バランスダイアフラム |
|||
a. アンバランスピストン(スタンダードピストン)
アンバランスピストンタイプは部品数が少ないので故障も少ない反面、構造上タンク残圧の変化に影響され、中圧値が大きく変化します。タンクの残圧が少なくなるにつれ呼吸抵抗が増えます。これはタンクの残圧の影響を受ける面をピストンがもっている為です。 b. バランスピストン アンバランスピストンタイプ同様、部品数が少ないので故障の少ない1stステージです。また、アンバランスピストンタイプに繰れべて、直接タンク残圧の影響を受ける面の断面積が小さな構造となり、タンク残圧変化による中圧への影響が少なくなっています。しかし、ピストンパイプの加工上・強度上の問題で、パイプ断面積を小さくするのには限界があり、タンク残圧の影響が幾分のこります。 |
|||
c. アンバランスダイアフラム ダイアフラムタイプは、ピストンタイプに比べて構造が複雑で部品点数も多いのですが、部品の加工精度がピストンタイプほど要求されません。また、中圧値の調整(設定)が容易にできることなどの利点があります。アンバランスダイアフラムは、タンク残圧の減少にともない中圧は上昇してしまいます。したがってダイビング開始時の呼吸抵抗が大きいレギュレータです。 d. バランスダイアフラム アンバランスダイアフラムと同様、中圧調整の容易な1stステージです。しかも構造上タンクの残圧の影響をほとんど受けない構造となっているため供給圧の変化に関係なく、非常に安定した中圧を得られる1stステージです。最近のレギュレータはほとんどがバランスダイアフラムタイプです。 |
|||
(4) 1stステージタイプと特性 1stステージの4つのタイプにおける中圧特性についてまとめておきます。ダイビング開始時には150Kg/cm2あったタンク圧ですが潜水時間とともにタンク圧は減少します、1stステージはタンク圧の減少に伴い中圧値が変化をし呼吸抵抗に影響してきます。 a.アンバランスピストン タンク圧の減少に比例して中圧値も低くなります。ダイビング開始時に比べて後半では呼吸抵抗が増える特長があります。 b.バランスピストン タンク圧の減少に比例して中圧値も低くなります。しかしアンバランスピストンほど呼吸抵抗を感じることはありません。 c.アンバランスダイアフラム ダンク圧の減少すると中圧値が高くなります。ダイビングの開始時は呼吸抵抗を感じますが、タンク圧が少なくなると呼吸抵抗が減ります。 d.バランスダイアフラム タンク圧の変化に影響を受けません。ダイビングの開始から終了まで安定した呼吸ができます。 レギュレータ構造によるタンク残圧の中圧値 比較表、グラフを参照ください。 |
|||
(5) 2ndステージの構造(深度変化による空気供給) 水深10mでダイバーにかかる水圧は2気圧ですからダイバーが吸う空気は2kg/cm2が必要となります。呼吸は始めると2ndステージ内の圧力が下がりダイアフラムが水圧で押され、レバーを介して弁を必要な量だけ開きます。1stステージから送られたエアーは弁から2ndステージ内に入り徐々に圧力が上がり2kg/cm2になった時に水圧とバランスして弁を閉じます。 ダイバーの呼吸に合わせて必要な空気を供給する仕組みです。 |
|||
(6) レギュレータを構成する部品と素材 レギュレータを構成する部品には150Kg/cm2といった高圧空気を制御する高圧シートから、ダイバーの呼吸要求による数百g/cm2の気圧変換を検知するダイアフラムまで数多くあります。その大半は真鍮やステンレスなどの金属と、シード・ダイアフラム・Oリングなどのゴム製品に分かれます。 またダイビングする環境(海・プール)によってレギュレ−タがさらされる環境が厳しい環境があります、レギュレータの構造を見て来て解るように小さなゴミや砂粒が入っただけでエアー漏れをおこすなどトラブルの原因となります。数年使ったレギュレ−タを分解すると最初に目に付くのが塩の塊です、錆びも時々見かけます。金属部分は塩と錆びを注意すれば十分使えます。またゴム部分は消費物ですから数年ごとに交換する必要があります。 ※ここでレギュレータの構造を説明したようにレギュレータは精密機械です、正しい取扱いと定期的なメンテナンスの必要性が解るとおもいます。 |
|||